夢はいつかは醒めるけど、はかなく切ない夢の時を生きて行こう


あの頃を歌ってくれ、ジュークボックス

2010年02月08日 15:21

久しぶりにYouTubeで懐かしい曲を聴いた。
いつかは俺だってと、夢を見ていたあの頃。

20代の頃勤めていた法律事務所は、ビルの2階にあった。
1階には小さな喫茶店があり、昼休みには時々コーヒーを飲みに行った。
店内は薄暗くお世辞にも雰囲気が良いとは言えなかったが、それも慣れると妙に落ち着いた。
店の奥まったところに、ジュークボックスがデンと置かれていた。
隣のビルのOLたちは、毎日のように来ていた。
彼女たちは、決まって野口五郎や伊丹幸雄を掛けた。

私は、彼女たちの曲が終わり話に夢中になっているときには、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの曲を掛けることがあった。
いつか陽の目を見るだろうと、がむしゃらに頑張っている彼らの演奏に、自分を重ね合わせていたのかもしれない。
お金を入れて選曲をし、機械がレコードをセットするのを待っているのが、何となく好きだった。
市とは名ばかりの寂れた地方都市で、昼休みといっても遊びに行くところもなく、事務所で本を読むか喫茶店へ行くしか、することがなかった。

仕事にやっと慣れた頃に、上司が突然退職した。
それまで分担してやっていた業務が、すべて私一人にかかってきた。
所長はいるだけで実務はまったくしなかったので、昼休みも弁当を食べるとすぐに机に向かった。喫茶店へ行く間などなくなり、毎日のように、残業に追われた。
新しい職員が、なんとか仕事をできるようになった頃には、私の「青春」の時はもう過ぎていた。

久しぶりにYouTubeで懐かしい曲を聴いた。
胸をかきむしるギターの音色は、仕事に追い立てられ、何も花の咲かなかった私の20代に、ふさわしいせつないものだったのかもしれない。

 

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